白内障手術後に注意すること

運転免許の更新があと半年に迫っとる、ちゅうて焦りだしたんは今年の春やった。視力が落ちてきとる気ぃしてな、免許センターで「はい、右?左?」ゆわれて「え? なんやこれ、米粒見せられてんのか?」てなるのが目に見えとった。 せやからム◯商店街の眼科に通っとる中名先生に相談したんや。「先生、わい、このままやと免許の更新アウトちゃいますか?」言うたら、先生は腕組みして「ほな駅前の幸子眼科クリニック、紹介しときまひょ」やて。なんやチェーン店の居酒屋紹介されたみたいな軽さやけど、大丈夫かいな。 ほんで行ってみたら、案の定「白内障やさかい手術しましょ」言われて、気ぃついたら8月22日に左目、29日に右目、両目まとめてスパッとやられてしもた。こっちは冷や汗タラタラやのに、先生らは昼ごはんの唐揚げ定食どこで食うかぐらいの顔しとる。 術後は3種類の点眼薬が出されたんやけど、これがまたややこしい。「朝昼晩」「1日4回」「寝る前だけ」とか、それぞれルールちゃうねん。目薬やのに将棋の定跡みたいに順番守らなあかん。「どれを先に入れて、何分あけて次や」て説明されても、わいの脳みそはもう処理落ち寸前。結局、スマホのアラームに「ピンクの蓋のやつ!」「青いやつ忘れんな!」てメモして乗り切ったわ。 1か月きっちり点眼せなあかん言われたけど、ほんまのとこ先生らにしてみたら「守らんかったらどうなるかの実験台」ぐらいに思てんちゃうかと疑ってる。まあ結果的には視界パァーッと明るなって、夜の街のネオンがえらい鮮やかに見えるようになった。あれや、手術前は阪神の打線ぐらい暗かったのが、術後は夏の甲子園の照明並みにパァーッと光っとる。 せやけど、こうして免許更新は乗り切れそうやけどな……わいの財布のほうは視界ゼロになってもうたわ。

8月31日にな、幸子眼科クリニックからお達しがあったんや。「9月以降の経過観察は中名先生のとこ行きなはれ」やて。ほら出た、また病院たらい回しシステムや。わいの眼ぇはボールやないっちゅうねん。キャッチボール感覚でポイポイ投げ合わんといてほしいわ。 それだけやのうて「点眼薬の継続については中名先生の判断に従ってな」やて。ほな最初から中名先生に丸投げしとけや思わへん? こっちは毎日「ピンクや!青や!寝る前のやつ忘れんな!」と必死に点眼してきたんやで。やっとこさ1か月頑張った思たら「続けるかどうかは次の先生に聞いてね」て、わいは人体実験の被験者やあるまいし。 さらにトドメや。「緑内障の点眼薬も、手術後のやつが終わってから再開するかどうかは、中名先生の指示に仰いでや」やて。えらい上から目線やなあ。「仰ぐ」て、わいどこの山伏やねん。 結局のところ、幸子眼科は「手術まで」「術後1か月まで」の担当、あとは「知らん、そっちでよろしく」っちゅう感じや。まるでマンションの管理会社が「修繕終わったから、あとは住民同士でなんとかしてや」て逃げよるんと同じや。 せやけどまあ、これでまた中名先生の顔見に行かなあかん。わいの目の健康は、クリニック間のリレー小説みたいに書き継がれていくわけやな。おもろいことに、わいは登場人物のくせに展開は一切選べへんねん。ほんま、医療ドラマのエキストラはつらいわ。

9月3日。久々にM商店街の中名先生のとこ行ったら、先生ニコニコして「順調ですわ」やて。ほら来た、「順調です」っていう医者の魔法の言葉や。なんでもこの一言で済む思てる節あるやろ。こっちは手術後の目薬三種混合で、朝昼晩・寝る前とスケジュール帳が点眼薬まみれになっとんねん。そら多少は順調にもなるわ。 先生曰く、「視力はええ感じに戻ってきてますね」。ほんで「緑内障の点眼薬は、手術後のやつが終わってから再開しときましょ」とのこと。なんかもう、「次のシーズンから復帰で」言われたプロ野球選手みたいやった。わいの目ん玉、いつからチーム入りしとったんやろ。 せやけど先生はさすが慣れとるわ。患者の不安とか質問とか全部「また来週見てから考えましょか」でかわしてくる。絶妙な間合いや。たぶんツッコミ入れたら全部スルーされるタイプやな。 診察終わって会計済ませて外出たら、まだ残暑がキツうてな。サングラスかけた瞬間、「ああ、見えるわ。空が青い……」て感動した。けどすぐ思たんや、「これ、手術代の明細見た後の目やったら、真っ赤に見えてるやろな」て。 ほんま、医者も目薬もようできた商売やで。こっちは治ってうれしいような、財布の視界がどんどん狭なっていくような。ま、これも順調いうことにしとこか。

9月24日に左目の点眼薬が終わって、10月1日に右目のも使い切った。これで長かった点眼マラソンもゴールや、思たんやけどな。念のため中名先生に「先生、これで手術後の目薬もうやめてええですか? 緑内障のやつ再開しても?」て聞いたら、「まだ」やて。 ……まだてなんやねん。わい、いままで「まだ」って言葉でこんなにモヤモヤしたん初めてや。ラーメン屋で「替え玉まだ?」言われたときでも、もうちょい気持ちのある「まだ」返してくれるで。 しかも9月3日以来、視力検査もしてへんねん。わいの目の中身、先生的にはもう「既読スルー」状態ちゃうか。白内障の手術を他院で受けたからやろな。自分とこの実績にならへん患者には、目の中見てもテンション上がらんのやろ。「あー、よう見えてるんちゃいます? 知らんけど」みたいな空気や。 なんや知らんけど、病院の世界にも“縄張り”あるんやな。わいの眼球、どうやらその縄張りから一歩はみ出してもうたらしい。今や中名先生の関心リストの下のほう、たぶん「風邪の予防」よりも下やろ。 せやけど、こっちはほんま不安やで。見えてるようで見えてへん、聞かれてるようで聞かれてへん。結局、医者いうんは患者の目ぇ見る前に、カルテと紹介状の出どころ見とるんちゃうか思てまう。 わいの視力は回復しとるのに、先生との信頼関係のほうが霞んできてる――ほんま皮肉な話や。

10月2日に高齢者講習行って視力検査受けたんやけどな、検査のお姉さんが無表情で、「あー、基準下回ってますね」てサラッと言いよる。いやいや、わいこの前、両目にメス入れて、光のシャワー浴びてきたとこやねんで? せやから「白内障の手術受けましたんや」と言うたら、「ああ、回復途中かもしれませんね~」て、アイスクリームでも溶けかけてるみたいな言い方で流されてしもた。 こっちは溶けかけてんの目ぇやのうて、寿命と免許の更新やっちゅうねん。 ほんで10月8日、中名先生のとこ直行して、「先生、視力検査してください」と頼んだんや。結果見た先生、「……うーん」と首をかしげるばっかり。なんやその仕草。わいの目、パズルになってしもたんかいな。「白内障の手術、あれ効果なかったんですか?」思わず聞いたら、先生はまるで大阪湾の潮目を見る漁師みたいな顔して空を見上げてた。 ほんで問題の緑内障点眼薬の再開について、また聞いたんや。「先生、そろそろあの目薬、再開したほうがよろしいんですやろか?」ほな返ってきた言葉、「まだ」。 ……また出た。「まだ」。この一言の中に、医療と患者の距離感と、わいの焦燥感と、先生の事務的な愛想のなさ、全部つまっとる。 ほんま言わせてもらうけどな、手術して、点眼薬して、財布は痩せ細ったのに、視力だけダイエットに失敗しとるんや。白内障は治ったんか治ってへんのか、中名先生の首の角度しか情報源がない状況で、わいは免許の崖っぷちに立たされてるちゅうわけや。 光は見えてるのに、未来は霞んで見える――これがいまのわいの視界やで。

10月15日、またもや中名先生の診察室に突撃や。「先生、緑内障の目薬、そろそろ再開したほうがええんとちゃいますか?」と聞いたら、ほんま毎度おなじみのセリフ「まだ」。この「まだ」、そろそろ標準語辞典に載せるべき医療用語やと思うで。「治療方針を考えるのがめんどくさい時の万能返答。患者の不安を長引かせる効果あり」くらいの注釈つけてな。 ところがや。わいが「先生、白内障の点眼薬は9月24日と10月1日で、とっくに終わっとりますけど?」と言うた瞬間、中名先生の目が「え、マジで?」いう顔になって、口も半開きのまま固まっとった。一瞬だけ診察室の時間が止まった気がしたわ。そこからの先生、急に慌ててカルテめくりながら「あっ、じゃあ緑内障の点眼薬、再開しときましょか」と決定。いやいや先生、それ、今決めたんやろ? なんでわいがスイッチ押さんと治療が進まへんシステムになっとんねん。 そやけど問題はそこやない。2週間も点眼薬ストップしてたんや。眼圧は大丈夫なんか、視神経は無事なんか、わいの目はそないタフにできてへんで。目薬という名のライフラインが断たれてた間に、こっちは眠ってる間も目玉が悲鳴あげてんのちゃうかと不安で寝返りうったわ。 その後、10月22日と29日にも診察受けたけど、視力検査もせんと「異常なし」。この「異常なし」いう言葉ほど、なんも見てない感丸出しの診断ないで。なんで視力落ちてきてるように感じるのに、「感じるだけや」と片づけられなあかんのや。 結局のところ、白内障手術はほんまに効果あったんか? 目は明るなったけど、未来はどんどん暗なってきとる。手術の結果は視力検査の数値やなくて、医者の首の角度で決まる。そないな世界で、わいは今日も「見えるようで見えてへん」治療の迷路をさまよい続けとるわけや。

K中央病院の眼科を受診したら、検査の結果や。「網膜が腫れてますね」やと。原因は何か言うたら、白内障の手術後に点眼薬やめるん早すぎたこと、ほんでその直後に緑内障の点眼薬を再開せんかったこと。中名医師の「まだ」一言が尾を引いとるんや。ほんま、医者の言葉ひとつで人生変わるっちゅうのを、身をもって味わわされるで。 処方されたんは「サンベタゾン点眼薬」と「ブロムフェナク点眼薬」。聞いただけで強そうやけど、効くんかどうかは別問題や。次回の検査で効果なかったら「網膜に直接注射します」やと。ああ恐ろしや。 ほんで1129日、診察の日。腫れはちょっとマシになっとる言われたけど、期待ほどではない。結局右目にサンベタゾン点眼薬の注射打たれることになった。注射器が目の前に見えた瞬間、わいの心臓は逃げ腰や。「目に針刺す」なんて想像しただけで卒倒もんや。けど、意外にも痛みは思ったほどやなかった。まあ「想像の恐怖」に勝るもんはないっちゅうこっちゃな。 1213日には左目の腫れが引いてて注射は免れたんやけど、次の131日までは両目に点眼薬続けることに。待合室で順番待っとったら、隣のおっちゃんがボソッと「これから網膜に注射せなあかんらしい」言うのが耳に入った。その声にドキリとしたわ。もしかして彼も中名医師の患者かいな、と。 結局のところ、わいの視力はこれからどうなるんやろな。治るんか、だましだましでいくんか。けどまあ、待合室で似たような境遇の人間の声聞いた瞬間、妙な連帯感みたいなんも芽生えるんやから不思議なもんや。ほんま、病院てのは「ここでしか会えん仲間」ができる場やな。ありがたないけどな。

11月13日、ついに堪忍袋の緒が切れたわいは、K中央病院の眼科へ乗り込んだ。中名先生の「まだ」にはもう飽き飽きや。こっちは視界が霞んできてんのに、先生の反応は毎回“薄目のリアクション芸”。そら不安にもなるっちゅうねん。 ほんでK中央の先生、検査するなり眉間にシワ寄せて「網膜、腫れてますね」やて。……出た、初耳ワード。網膜が腫れるて、目ぇの中で何が起きとんねん。わい、知らんうちに目の中で風船膨らませてたんか思たわ。 原因を聞いたら、「白内障の手術後の点眼薬を早くやめすぎたこと、そしてそのあとすぐ緑内障の点眼薬を再開しなかったこと」やて。ほら見い。中名先生の「まだ」タイムが、わいの網膜を膨らませとったんや。医療って怖いな、無視が一番効くんやから。 処方された薬は「サンベタゾン点眼薬」と「ブロムフェナク点眼薬」。なんか名前が強そうやろ? 必殺技みたいやけど、効いてくれへんかったら次は「網膜に直接注射」やて。……いやもう、怖いとかいうレベルちゃうやん。「直接」て言葉、医療の世界ではだいたいロクな予感せえへん。「直接注射」「直接確認」「直接法」――どれも痛いか高いか怖いの三択や。 診察室出てエレベーター乗りながら思たわ。「白内障手術は光を取り戻すためのもんやったはずやのに、今はその光がまぶしすぎて涙出る」ってな。 ほんま、目はよう見えるようになっても、医者の見立てだけはいつまでたっても霞んだままや。わいの視界より、あの先生らの責任感のほうが先にぼやけてもうてるわ。

11月29日、K中央病院で再検査。先生いわく、「網膜の腫れ、ちょっとはマシになってますけど、まあ……期待したほどではないですね」やて。“まあまあ”言うてるときの関西人の顔と一緒のトーンや。なんやそれ、褒めてんのか責めてんのかわからん中途半端さ。医者も結局、人間国宝級の「ごまかし上手」やな。 ほんでや、「右目にサンベタゾンの注射しときましょか」て、サラッと言いよる。……いや、「しときましょか」ちゃうねん。お好み焼き追加するみたいに言うなや。こっちは目ぇにブスッといかれるんやで? 診察台に横になった瞬間、わいの心臓は阪神優勝パレード並みにバクバク鳴っとった。目の前に注射器が見えた瞬間、魂が「すんません、ちょっと外出てええですか」言うて逃げかけたわ。それでも先生は落ち着いたもんで、「力抜いてくださいね~」言いながら、淡々と準備進めとる。いや先生、力抜けるかい。目の前に注射針あんねん。 で、いざ刺されたら――あれ? 思ったほど痛なかった。拍子抜けや。「もっと劇的なんかと思いましたわ」言うたら、先生ニコッとして「皆さんそう言います」やて。……そらそうやろ。目に注射されて「また打ってください」言う人、おらんやろ。 病院出てから、信号待ちしながら思たわ。白内障、緑内障、網膜の腫れ、点眼薬、注射。目ぇの治療っちゅうのは、だんだん“光を取り戻す旅”やのうて、“痛みと出費の耐久マラソン”みたいやな。 けどまあ、怖いもんやな。慣れたら次は両目いっときましょか、言われても、わい多分「ほなお願いします」て言うてまうんやろな。人間、医者の前ではどんな理屈も目ぇつぶってしまうんや。

12月13日、K中央病院にまた出向いた。左目の腫れはどうやら引いたらしい。先生が「うん、今日は注射なしで大丈夫ですね」言うてくれたとき、わいの心の中で小さくガッツポーズしたんは内緒や。けど同時に、「また勝っただけで、次はどうなるかわからん戦いなんや……」という、なんとも言えん敗者の気持ちも混ざっとった。 結局、次の1月31日まで両目に点眼薬継続。もうわいの生活、点眼薬のフタの開け閉めで1日のBGMが構成されとる。朝も夜も、シュッ、パチン、シュッ、パチン……まるで薬局のテーマ曲や。 診察終わって待合室で座っとったら、近くのおっちゃんが電話してる声が耳に入ってきた。「これから網膜に注射せなあかんらしいねん」……その瞬間、背中がゾワッとした。あの言葉、聞くたびに寿命2日くらい削られてる気がするわ。 そしてふと考えてしもた。“ひょっとしてこのおっちゃんも中名先生の患者やったん違うか。あの『まだ』の犠牲者仲間なんちゃうか”わいの脳みそ、勝手にそんな推理ドラマみたいな展開し始めてしもて、不安の火に油を注いどった。 だってやな、白内障手術の後に点眼薬やめさせるタイミング見誤って、さらに緑内障の薬止められた結果、網膜腫れるんやろ?わいだけやろか、こんな回り道したん。それとも、この待合室には同じ道を歩いてきた“仲間”がゴロゴロおるんやろか。 視力の回復は遅い。点眼薬は多い。病院は混んでる。医者の説明は短い。なんやもう、人生で一番「見えてへん」状態なんは、目やのうて医療そのものなんちゃうか思えてくるわ。 待合室で天井見上げながら思た。“わいの視力、ほんまに戻るんやろか。 そして、こんな目に遭ってるの、わいだけとちゃうんやろな……” そんな不安が胸をぐるぐる回って、まるで目ん玉の中の混濁みたいに晴れへんのや。

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